ー音に影を見るーエリック・ルーピアノリサイタルを聴いて
2025/12/17
昨日、エリック・ルーのピアノ・リサイタルに行ってきました。
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール優勝者の演奏を、生で聴く機会。
ホールに入る前から、どこか静かな高揚感がありました。
18時の開場に合わせてホールへ。
まずはCDを購入し、直筆サイン入りポストカードのお渡し券を無事にゲット。
この時点ですでに、音楽会としてだけでなく「人と音楽に触れる時間」が始まっているように感じました。
一見すると、IT関連に勤めていそうな青年
実際に見るエリック・ルーは、
舞台に登場した瞬間、少し意外な印象を受けました。
いわゆる「ピアニスト然」とした雰囲気ではなく、
一見すると IT関連企業に勤めていそうな、今どきの若者風。
その自然体な佇まいが、かえって強く印象に残ります。
そしてもう一つ、強烈に記憶に残ったのが
ショパン・コンクールでも話題になった“事務椅子”。
その椅子に座り、
まるでピアノにすっと身体が「はまる」ようにして演奏を始める姿は、
これまで私が見てきたどのピアニストとも違うものでした。
力強さのあとに訪れる「影のような音」
エリック・ルーの音で、特に心を掴まれたのは、
力強いフォルテのあとに、ふっと抜かれる音。
音が消えたわけではなく、
そこに“影”のような音が残る。
強く打鍵したあと、
決して力で押し切らない。
むしろ、そこから音楽が内側へ沈み込んでいくような感覚。
その一瞬一瞬が、とても美しく、そして深い。
速さや派手さで圧倒する演奏ではありません。
でも、一音一音が「聴く側に委ねられている」、そんな演奏でした。
アンコール5曲。もう一つの部があったような夜
この日のリサイタルは2部制。
それだけでも十分なプログラムだったのに、
アンコールがなんと 5曲。
最後のショパン:ピアノソナタNO.3 第4楽章を弾き終えたところでほとんどの聴衆が
スタンディングオベーションで拍手喝采の中、エリック・リューは静かにピアノのふたを閉めました。
全ての聴衆がとても満足した瞬間でした。
<アンコール曲目>
シューベルト:即興曲 第3番 Op.90 D899
ショパン:ワルツ第5番 Op.42
ショパン:ワルツ第7番 Op.64-2
バッハ:ゴルトベルク変奏曲よりアリア
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 第4楽章
もう一部、別のリサイタルがあったかのような充実感。
聴衆への誠実さ、音楽への愛情が、アンコールの一曲一曲から伝わってきました。
演奏会のあとに、人としての距離が縮まる時間
終演後は、お渡し会へ。
実際に対面すると、舞台上とはまた違う、柔らかい表情。
サイン入りポストカードを手渡してもらう、その一瞬。
「大きな音楽家」でありながら、
とても人間的で、近い存在に感じられました。
こうした体験は、
CDや配信では決して味わえないものです。
教える立場として、改めて思ったこと
今回のリサイタルを聴いて、
ピアノを教える立場として、改めて強く感じたことがあります。
それは、
速く弾くことでも、強く弾くことでもなく、
「音をどう聴いているか」が音楽を決めるということ。
エリック・ルーの演奏には、
常に「耳」がありました。
次の音を出す前に、前の音をちゃんと聴いている。
この感覚こそ、
子どもたちにも、大人の生徒さんにも、
レッスンで大切に伝えていきたい部分です。
ピアノは、一生付き合える友達
プロの演奏を聴くことは、
「上手さ」を見せつけられる時間ではありません。
音楽が、
人生とどう寄り添っていくのか。
人が音楽とどう生きていくのか。
そんなことを、静かに教えてくれる時間です。
昨日のエリック・ルーのリサイタルは、
私にとっても、
今日からのレッスンにつながる、大切な一夜になりました。
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